名古屋で起業するならどこ?データが示す「戦略的な場所」選びの新視点

「名古屋で起業するならどこ?データが示す『戦略的な場所』選びの新視点」というテキストと、名古屋テレビ塔と思われるタワーや高層ビル群のイラスト。データに基づいた分析が、名古屋での起業に最適な場所選びに役立つことを示唆している。
名古屋で起業するならどこ?データが示す場所選びの新視点

名古屋で起業予定のみなさん、オフィスや活動拠点をどこに構えるべきか、悩んでいませんか? 家賃やアクセスも大切ですが、実は「周りにどんな事業を行うスタートアップが、どれくらい多様に存在するか」が、あなたのビジネスの成長に影響を与えるかもしれない、という研究結果があるんです(※)。この記事では、その研究をヒントに、名古屋での戦略的な起業場所選びに役立つ「新しい視点」をご紹介します。この記事を読めば、感覚だけに頼らない、データに基づいた場所選びの考え方がわかり、あなたの事業に合った環境を見つけるヒントが得られるでしょう。
(※参考:Okamoto, 2024。詳細は末尾の参考資料参照)

 

なぜ「ご近所のスタートアップ」の「多様性」が重要なのか?

名古屋で新しいビジネスを始めるとき、どんな場所を選ぶかはとても大切ですよね。駅からの近さや家賃の安さなどが主な判断基準だったかもしれません。しかし、最近の研究で、「新しい会社が生まれやすい場所には、そこに集まるスタートアップの『多様性』が関係している」という、非常に興味深い結果が示されました。ここで言う「スタートアップ」とは、新しい技術や独自のアイデアで成長を目指す若い企業のことです。

注目すべきは、一般的な工場や店舗などを含む地域全体の産業の多様さよりも、「スタートアップ同士の事業内容の多様性」の方が、新しいスタートアップの誕生に影響を与えている可能性が高い、という点です。では、なぜ周りのスタートアップの多様性が重要なのでしょうか。研究者たちは、その背景にあるメカニズムとして主に二つの点を挙げています。一つは、多様なスタートアップが集まることで、異なる知識やアイデアが意図せず伝播し、新しい発想の種となる「知識のスピルオーバー」(=知識やアイデアが自然に周りに広がること)が起こりやすくなること。もう一つは、交流を通じて、お互いのビジネスを理解しやすく協力しやすい相手が見つかる可能性が高まることです。この「認知的な近さ」(=知識や経験が似ていて理解しやすいこと)も、連携には重要な要素となります。つまり、周りの環境が、あなたのビジネスに必要な情報や協力関係をもたらしてくれるかもしれない、ということです。

 

あなたに合うのはどっち?場所選びの2つの「多様性」タイプ

その研究では、地域のスタートアップの事業内容の多様性を、大きく2つのタイプに分けて分析していました。「関連多様性」(=似た分野の集まり)「非関連多様性」(=異なる分野の集まり)です。どちらが良い・悪いではなく、あなたの事業戦略や起業フェーズによって、どちらの環境がより適しているかが変わってきます。以下の表で、それぞれの特徴を比べてみましょう。

 

特徴 タイプA:「似た仲間」エリア
(関連多様性)
タイプB:「ごちゃまぜ刺激」エリア
(非関連多様性)
どんな場所? 事業分野が近いスタートアップが多い(例:IT系、ものづくり系) 事業分野が全く異なるスタートアップが混在(例:IT、飲食、デザイン、福祉など)
期待されるメリット ・専門知識の深化
・協力しやすい(認知的な近さ)
・業界情報の入手
・予期せぬアイデア創出
・新しい視点の獲得
・異分野連携のチャンス
どんな人/フェーズ向け? ・特定分野で専門性を高めたい
・同業者との連携重視
シード期以降で事業の軸が固まり、効率的な成長を目指す段階
・全く新しい分野に挑戦したい
・多様な刺激から革新を起こしたい
アイデア段階や創業初期で、可能性を広げたい段階

 

このように、事業のアイデアを探している段階や、様々な可能性を模索したい創業初期には、多様な分野の人が集まる「非関連多様性」の高い環境が刺激になるかもしれません。一方で、事業の方向性がある程度固まり、専門性を深めたり、同業者との連携で効率的に成長したりしたいシード期以降の段階では、「関連多様性」の高い環境が有利に働く可能性があります。

 

知っておきたい「距離感」の影響:地理的な近さと「理解しやすさ」の関係

この研究の分析で、もう一つ非常に示唆に富む発見がありました。それは、調査する地域の「地理的なスケール(広さ)」によって、先ほどの2つの多様性のタイプが新規スタートアップの誕生に与える影響の度合いが変わってくるかもしれない、という点です(研究データに基づくと)。

  • 「ごく狭い範囲」(研究では500メートル四方程度):
    • この範囲では、「似た仲間」(関連多様性)のメリットも、「ごちゃまぜ刺激」(非関連多様性)のメリットも、どちらも同程度に新しいスタートアップの誕生を促進する傾向が見られました。すぐ近くにいれば、日常的な接触や偶然の出会いからでも、分野が近くても遠くても、何らかの知識の伝播や刺激が生まれやすいのかもしれません。
  • 「やや広い範囲」(研究では1キロメートル四方程度):
    • ところが、もう少し視野を広げると、傾向に変化が見られました。「似た仲間」(関連多様性)の影響力の方が、「ごちゃまぜ刺激」(非関連多様性)の影響力よりも相対的に重要になる可能性が示唆されたのです。

これは何を意味するのでしょうか?研究者は、地理的な距離が少し離れると、偶然の出会いによる知識交換(非関連多様性の利点)の機会は減る一方で、共通の知識基盤や経験を持つ、つまり「お互いを理解しやすい」(認知的な近さ)相手との方が、距離があっても協力関係を維持しやすい(関連多様性の利点)のではないかと考察しています。言い換えれば、地理的な近さが十分でない場合、それを補うのが「認知的な近さ」なのかもしれない、ということです。

この結果は、名古屋で起業場所を探す際にも示唆を与えてくれます。「すぐ周り」の環境だけでなく、「少し足を延ばせばアクセスできる範囲」にどのようなスタートアップが集積しているか、そしてそれが自分の事業と関連性が高いのか低いのかを意識することで、より戦略的な場所選びが可能になるかもしれません。

 

多様性だけじゃない:場所選びで考慮すべき他の要素

ただし、新しいスタートアップの誕生は、周りのスタートアップの多様性だけで決まるわけではありません。この研究でも、「その地域にもともとどれだけ多くのスタートアップが存在しているか(集積度)」は、多様性の種類に関わらず、一貫して新しいスタートアップの誕生に強いプラスの影響を与えていることが示されています。つまり、**活気のある場所に身を置くこと自体のメリットも大きい**と言えるでしょう。

また、研究ではベンチャーキャピタル(VC)や大企業の存在なども考慮されていますが、その影響は地域や条件によって異なるようです。重要なのは、場所の多様性はあくまで一つの要因であり、他の様々な要素(支援機関の充実度、地域の文化、生活環境など)と組み合わさって地域全体の魅力が形成される、ということです。

 

まとめ:新しい視点で、戦略的な場所選びを

今回ご紹介した研究結果は、名古屋での起業場所選びに、「周りのスタートアップの事業内容の多様性(関連性/非関連性)」と「その地理的なスケール(距離感)」という、データに基づいた新しい視点を与えてくれます。家賃やアクセスといった従来の条件に加えて、「どのような知識や刺激、協力関係を周囲に求めるか」、そして「自分の事業フェーズに合った環境はどちらか」という視点で場所を吟味することで、より戦略的な意思決定ができるようになるかもしれません。

この「多様性」や「集積度」という観点から見ると、2024年10月に鶴舞エリアにオープンした名古屋の新しい大規模インキュベーション施設「STATION Ai」は、特に注目すべき存在と言えるでしょう。国内最大級の規模を目指し、多様な分野のスタートアップ、大企業、大学、そして様々な支援機関などが一つの場所に集まることが計画されています。これは、研究で示された高い「非関連多様性」(様々な分野の混在)と「スタートアップの集積度」を同時に実現する可能性を秘めています。さらに、愛知県の強みである「ものづくり」分野における高い「関連多様性」(似た仲間)」も期待できるかもしれません。

研究結果を踏まえると、このような環境は、知識のスピルオーバー(知識の広がり)や新たな連携を生み出す上で、理論的には非常に有利な条件を備えていると考えられます。多様な主体が物理的に近接することで、思いがけない出会いやアイデア創出の機会が増えることが期待されるためです。

 

では、「STATION Ai」に入居するのが常に最善の選択なのでしょうか?

必ずしもそうとは限りません。STATION Aiが多くの起業家にとって非常に魅力的な選択肢であることは間違いありませんが、最適な環境は、やはり一人ひとりの事業内容、成長ステージ、そして何を最も重視するかによって異なります。「特定のニッチな分野で、深く専門家と繋がりたい」「まずはコストを抑えたい」「静かな個室環境が必須」といったニーズには、他のインキュベーション施設やオフィスの方が適している場合もあります。

STATION Aiは、その規模と多様性から「ごちゃまぜ刺激」(特にアイデア段階~創業初期)と「集積」のメリットを最大限に享受したい起業家にとっては有力な候補となりえますが、ご自身の状況に合わせて、他の選択肢と比較検討することが重要です。

ただし、繰り返しになりますが、素晴らしい場所を選んだとしても、それだけでビジネスが成功するわけではありません。しっかりとした事業計画を作り、必要な資金を準備することが、なによりも大切です。特に、創業期の資金調達(例えば、日本政策金融公庫からの創業融資など)は、あなたのビジネスのスタートダッシュを大きく左右します。

 

FAQ(よくある質問)

Q1. この記事で紹介されている研究は東京のものですが、名古屋での場所選びにも本当に参考になりますか?

A1. はい、参考になる可能性は高いと考えられます。都市の構造や産業集積のパターンは地域によって異なりますが、「知識のスピルオーバー」や「認知的な近さ」といった、スタートアップの成長や交流の基本的なメカニズムは、多くの都市で共通して見られる現象だからです。もちろん、名古屋独自の特性も考慮する必要はありますが、研究で示された「多様性の種類(関連/非関連)」や「地理的スケール(距離感)」といった考え方は、名古屋で場所を選ぶ際の新しい判断軸として十分に活用できるでしょう。

 

Q2. 「関連多様性」や「非関連多様性」って、具体的にどうやって調べればいいのですか?

A2. 厳密な測定は専門的な分析が必要ですが、エリアを実際に歩いてみたり、Google マップなどで周辺の企業名を検索したりすることで、大まかな雰囲気は掴めます。「ソフトウェア」「デザイン」「コンサルティング」など特定の業種を示すキーワードで検索してみるのも良いでしょう。また、先ほどご紹介したインキュベーション施設の入居企業リストやウェブサイト、地域のスタートアップ関連のニュースサイトなども、どんな企業が集まっているかの参考になります。重要なのは、「自分と似た事業が多いか、それとも全く違う事業が多いか」という視点で観察することです。

 

Q3. 結局、名古屋で起業するなら、どのエリアが一番おすすめなのですか?

A3. 「すべての人にとって一番良いエリア」というものは、残念ながらありません。最適な場所は、あなたの事業内容、ビジネス戦略(連携重視か、異分野刺激重視か)、そして予算や働き方の希望によって大きく異なるからです。「似た仲間」との連携を重視するなら関連性の高いエリア、「ごちゃまぜの刺激」を求めるなら非関連性の高いエリアが候補になります。また、スタートアップが多く集まっている活気のあるエリアを選ぶこと自体のメリットも考慮すべきでしょう。この記事の視点やインキュベーション施設の比較記事などを参考に、あなた自身の優先順位を明確にし、候補エリアを絞り込んで、必ず現地を訪れて雰囲気を確認することを強くおすすめします。

 

Q4. 「知識のスピルオーバー」や「認知的な近さ」について、もう少し詳しく教えてください。

A4. はい、簡単に説明しますね。

  • 知識のスピルオーバー(=知識やアイデアが自然に周りに広がること): ある企業や個人が持つ知識、技術、アイデアなどが、公式な取引や契約を経ずに、周囲に「こぼれ落ち(スピルオーバー)」て広まり、他の企業や個人のイノベーションや生産性向上につながる現象のことです。例えば、同じビル内の他社との雑談からヒントを得る、技術者が交流する中で新しい知見を得る、などが考えられます。近くに多様な知識を持つ主体がいるほど、この現象が起きやすくなると期待されます。
  • 認知的な近さ(=知識や経験が似ていて理解しやすいこと): 地理的な距離ではなく、知識ベース、経験、価値観、思考様式などがどれだけ似ているか、お互いをどれだけ理解しやすいか、という概念です。例えば、同じ専門分野の研究者同士は、専門用語や研究手法に関する共通理解があるため、「認知的に近い」と言えます。認知的な近さがある方が、深いレベルでのコミュニケーションや効果的な協力がしやすいと考えられています。

 

Q5. STATION Aiは良さそうですが、自分に合っているか分かりません。

A5. STATION Aiは大規模で多様な環境が魅力ですが、それが必ずしもすべての人に合うとは限りません。ご自身の事業フェーズ(準備中、創業初期、拡大期など)、業種、予算、求めるサポート内容(メンタリング、特定の技術支援、ネットワーキングなど)、そして働き方の好み(活気あるオープンな空間か、静かな個室か)などを整理してみましょう。その上で、STATION Aiの提供するプログラムや施設の特徴、利用条件などを詳しく調べ、他のインキュベーション施設(比較記事参照)やレンタルオフィスなどとも比較検討することが大切です。可能であれば、オープン前イベントや説明会に参加したり、オープン後には見学したりして、実際の雰囲気を確かめることをお勧めします。

 

Q6. 場所選びも大事なのは分かりましたが、やはり創業融資が心配です。

A6. お気持ちお察しします。起業において資金計画、特に創業融資は非常に重要な要素です。素晴らしいビジネスアイデアと最適な場所があっても、資金がなければ事業を始めることも続けることも難しくなります。場所選びと並行して、あるいはそれ以上に、創業融資の準備をしっかりと進めることが大切です。自己資金の準備、説得力のある事業計画書の作成、金融機関との面談対策など、専門的な知識が求められる場面も多くあります。私たち税理士は、まさにその専門家です。融資獲得に向けた具体的なアドバイスや事業計画策定のサポートを行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。

 

場所選びと資金計画、専門家にご相談ください

戦略的な場所選びのヒントを得て、具体的な活動拠点の候補が見えてきたら、次はしっかりとした事業計画と資金計画を立てることが重要です。特に創業融資については、専門的な知識が成功の鍵を握ります。場所選びのご相談と合わせて、事業計画や創業融資についてもお気軽にご相談ください。名古屋で挑戦するあなたの夢の実現を、全力でサポートいたします。

 

 

参考資料

 

(注: 上記URLは記事作成時点のものです。リンク切れや内容変更の可能性があります。)

著者情報

佐治 英樹(さじ ひでき)
佐治 英樹(さじ ひでき)税理士(名古屋税理士会), 行政書士(愛知県行政書士会), 宅地建物取引士(愛知県知事), AFP(日本FP協会)
「税理士業はサービス業」 をモットーに、日々サービスの向上に精力的に取り組む。
趣味は、筋トレとマラソン。忙しくても週5回以上走り、週4回ジムに通うのが健康の秘訣。

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