OpenAIが示す新たな道筋:パブリック・ベネフィット・コーポレーション(PBC)とは?
革新的なAI技術で世界をリードするOpenAIが、組織構造を大きく変え、パブリック・ベネフィット・コーポレーション(PBC)という法人形態への移行計画を発表し、話題を呼んでいます。私たちの生活に大きな変化をもたらしてきたOpenAIが、なぜ今、PBCという道を選んだのか? そして、この選択が私たちにもたらす意味とは?
本記事では、PBCとは何か、日本に導入される場合の課題やメリット、そして起業における未来の可能性を分かりやすくご紹介します。
パブリック・ベネフィット・コーポレーション(PBC)とは?
PBCとは「社会貢献を第一に考えながら、利益も追求する」という、新しい考え方の株式会社のことです。従来の株式会社は、株主の利益を最大化することが主な目的でした。しかし、PBCはそれだけではありません。
PBCでは、会社設立時に「私たちはこのような社会貢献を目指します!」という目標を明確に定めます。そして、日々の事業活動を通して、その目標達成を目指します。もちろん、企業として利益を追求することも重要ですが、社会貢献という軸を常に持ちながら事業を進めていく点が、PBCの大きな特徴です。
たとえば、環境問題の解決を目指すPBCであれば、事業活動を通じて二酸化炭素排出量削減技術を開発したり、持続可能な社会の実現に貢献する製品を作ったりするでしょう。教育格差の是正を目指すPBCであれば、質の高い教育を低価格で提供したり、地域の子どもたちの学習支援を行ったりすることが考えられます。
OpenAIの今回の決断は、汎用人工知能(AGI)の開発という壮大な目標を達成するために、巨額の開発費用を確保し、激しい国際競争を勝ち抜くための資本調達を可能にすると同時に、企業としての経営の自由度を高めることを目的としたものと考えられています。営利法人への転換には違いありませんが、その中でも特に公共性の高いPBCを選択したことは、社会的な責任を意識し、事業を進めていくという強い意志の表れと解釈できるでしょう。
なぜ今、PBCが注目されるの?
近年、世界的に「社会課題を解決したい」という志を持つ企業が増加しています。地球温暖化、貧困、格差など、私たちを取り巻く問題は複雑化しており、その解決には企業の力も不可欠です。
私たちの意識も変化してきています。「安さや便利さ」だけでなく、「社会や環境に配慮した商品やサービスを選びたい」と考える消費者が増えているのです。このような社会の変化の中で、PBCは、企業の存在意義を改めて見つめ直し、新たな価値創造の手段として注目されているのです。
PBC のメリット・デメリット
社会貢献と利益を両立させるPBCには、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
メリット | デメリット |
---|---|
企業の理念や社会的な使命を明確に発信できる | 設立・運営に通常の株式会社より手間やコストがかかる場合がある |
社会貢献に関心の高い優秀な人材を獲得しやすい | 制度が新しいため、法的な解釈や前例が少なく、不確実性が残る |
社会的な信頼やブランドイメージが向上し、消費者・投資家からの支持に繋がりやすい | 社会貢献と利益のバランスを考慮した経営判断が求められる |
社会的な使命に基づく経営判断が、短期的な利益追求の圧力から保護される可能性がある | 社会貢献活動を評価する統一基準がないため、消費者・投資家へのアピールには工夫が必要 |
従業員のエンゲージメント向上や企業文化の醸成に繋がる |
世界に広がる PBC の動き
アメリカでは、ベネフィット・コーポレーション(BC)という、企業の社会的責任を重視する法人形態が多くの州で導入され、普及が進んでいます。パブリック・ベネフィット・コーポレーション(PBC)は、このBCの一形態で、特にデラウェア州で採用されている制度として知られています。OpenAIも、このデラウェア州のPBCを選択したことが注目されています。
内閣官房の『基礎資料』によると、2018年の米国を対象とした調査では、7704社のベネフィット・コーポレーションが設立されています。[1]
また、デラウェア州のパブリック・ベネフィット・コーポレーションへの投資額は増加傾向にあり、2014年から5年間で約6倍になっています。[1]
投資対象となっている分野も、金融、教育、アート、食品、農業、アパレル、ITなど、その分野は多岐にわたります。
ヨーロッパでも、イギリスのコミュニティ・インタレスト・カンパニー(CIC)や、フランスのEntreprise à Mission(ミッションを有する会社)など、PBCに近い理念を持つ法人形態が登場しており、世界的な広がりを見せています。
日本における PBC の可能性
日本においても、「新しい資本主義」の実現に向け、企業が経済的な利益のみならず、社会的な価値の創造も重視されるようになっています。[1]
内閣官房の『基礎資料』にも、「民間で公的役割を担う新たな法人形態」の検討に関する記述があり、PBCのような制度への関心の高さが窺えます。
しかし、日本でPBCを設立するには、まだいくつかの課題があります。日本の会社法は、株主の利益最大化を目的とする考え方が根強いため、PBCのように多様なステークホルダーの利益を考慮する会社形態を導入するには、法整備が不可欠です。
日本にPBCを導入する場合の課題として、既存の会社法との整合性、公益の定義の明確化、情報開示のあり方、企業の負担などが挙げられています。[1]
これらの課題を一つひとつクリアしていくことで、日本においてもPBCが積極的に設立・運営される未来が拓けるでしょう。
将来的にPBCで起業を考える方へ
PBCのように「社会貢献」と「利益」の両立を目指す企業を立ち上げたいとお考えであれば、まずはビジネスモデルを改めて見直すことが重要です。
具体的には次のステップを検討しましょう。
- 明確な社会目的を設定しましょう
- 対象となるステークホルダーを明確にしましょう
- 資金調達や情報開示に関する計画を具体的に立てましょう
そのような未来を見据え、起業準備を進める際には、公的融資や税制上の優遇措置なども検討に入れておくと良いでしょう。
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FAQ
- Q1. ベネフィット・コーポレーション(BC)とはどのような企業形態ですか?
- A. ベネフィット・コーポレーション(BC)は、アメリカの一部の州で認められている法人形態で、企業の経済的な利益だけでなく、従業員、地域社会、環境など、幅広いステークホルダーの利益を考慮する必要があるのです。株主価値の最大化に加えて社会貢献にもコミットし、その成果について報告する義務がある点が、通常の株式会社と異なる特徴です。
- Q2. なぜ企業はベネフィット・コーポレーション(BC)になることを選ぶのでしょうか?
- A. 主に次のような理由が考えられます。
- ブランド向上: 社会的な使命を重視する姿勢は、消費者や投資家からの共感や支持を得やすいためです。
- 人材獲得: 「社会に貢献したい」と考える優秀な人材を惹きつけられる可能性が高まります。
- 長期的視点の経営: 株主利益だけでなく、持続可能な社会づくりを視野に入れた意思決定がしやすくなるためです。
- Q3. 日本版BCはすぐに設立できますか?
- A. 現時点では、日本にBCと同等の法人形態はありません。内閣官房の「新しい資本主義」の検討会議でも、民間が公的役割を担う新しい制度の導入について議論されていますが、具体的な法整備は今後の課題となっています。そのため、今すぐにBCのような形態で起業することは難しい状況といえます。
- Q4. NPOとの違いはありますか?
- A. 大きな違いは「営利法人か、非営利法人か」という点です。NPOは営利を目的としないため、得た利益は分配せず、組織運営のために再投資されます。一方、BCはあくまで営利法人として利益を追求しながら、社会的使命を果たすことを明確に定款で定める形態です。つまり、利益を出せる点は通常の株式会社と同じですが、その利益を生み出すプロセスで、より強く社会や環境へ配慮する義務があるというイメージです。
まとめ
パブリック・ベネフィット・コーポレーション(PBC)は、社会課題の解決と利益創出を両立する、これからの時代に求められる企業形態と言えるでしょう。
日本での導入はまだこれからですが、社会貢献と起業を両立したいと考える方にとって、大きな可能性を秘めた選択肢となるでしょう。
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[1] 内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局. (令和4年4月). 基礎資料 (https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai6/shiryou1.pdf)