ゼブラ企業:社会課題解決と経済成長の両輪を回す、持続可能な未来への鍵

公開日 2024年8月1日 最終更新日 2024年8月9日

ゼブラ企業とは

ゼブラ企業とは、2017年にアメリカで提唱された概念であり、時価総額を重視するユニコーン企業と対比させて、社会課題解決と経済成長の両立を目指す企業を、白黒模様、群れで行動するゼブラ(シマウマ)に例えたものです。従来の企業像とは一線を画し、経済的利益の追求だけでなく、社会や環境への貢献を重視する姿勢が特徴です。

中小企業庁は、地域の社会課題解決の担い手となるゼブラ企業(「ローカル・ゼブラ企業」)の創出・育成に向けて「地域課題解決事業推進に向けた基本指針」を令和6年3月1日公表しました。この指針は、地域課題解決型ビジネスへの理解を深め、多様な関係者との連携を促進し、持続可能な社会の実現を目指すための道筋を示すものです。

ローカル・ゼブラ企業は、地域固有の課題やニーズを的確に捉え、その解決に資するビジネスを展開することで、地域社会に貢献します。同時に、地域資源を活用し、地域住民の雇用を創出することで、地域経済の活性化にも寄与するものと期待が寄せられています。

ローカル・ゼブラ企業の資金調達:多様なニーズに対応する支援策

ローカル・ゼブラ企業は、その事業の特性上、従来型の金融機関からの融資を受けにくい側面がありました。しかし近年、社会的インパクトを重視した投資が注目を集めており、ローカル・ゼブラ企業への資金供給の道も広がりつつあります。

※社会的インパクトは、社会・環境的効果のことであり、地域の社会課題を解決し、社会に与える良い変化を指します。

資金調達の方法としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 補助金・助成金:
    • [総務省]ローカル10,000プロジェクト-地域経済循環創造事業交付金:産学金官の連携により、地域の人材・資源・資金を活用した新たなビジネスを立ち上げようとする民間事業者などの初期投資費用を支援
    • [経済産業省] ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金: GX・DXなどの成長分野への前向き投資や海外展開を促すため、生産性向上に資する革新的な製品・サービス開発、生産プロセス等の省力化を行う中小企業・小規模事業者等の設備投資等の経費の一部を支援

 

  • 融資:
    • [日本政策金融公庫]ソーシャルビジネス支援資金: 社会的課題の解決を目的とする事業を営む方などを対象に、ソーシャルビジネスを支援する制度
    • [日本政策金融公庫]新規開業支援資金: 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方を対象に、幅広い方の創業・スタートアップを支援する制度

 

  • 出資:
    • [中小機構]起業支援ファンド: 設立5年未満の、創業又は成長初期段階にあるスタートアップに対して、機構が出資するファンド(投資会社が運営)が資金提供と事業拡大に向けた経営支援を実施。
    • [中小機構]中小企業成長支援ファンド: 新事業展開、事業の再編、承継等により、新たな成長・発展を目指す中小企業に対して、機構が出資するファンド(投資会社が運営)が資金提供と様々な経営課題解決に向けた支援を実施。

 

  • その他:
    • 企業版ふるさと納税: 地方公共団体が行う地方創生の取組に対する企業の寄附について法人関係税を税額控除する制度。企業は税額控除や地域との繋がりと言ったメリットを得られ、地方公共団体は地方創生の取組に係る原資を得ることができる。
    • 休眠預金等活用制度: 行政が対応することが困難な社会的な課題解決のための公益活動を行う団体に対して、事業資金を助成、出資の形で提供する制度。資金提供に加え、組織の能力強化を目的とした伴走支援等も受けることができる。

 

これらの資金調達手段に加えて、金融庁でもサステナブルファイナンスとして、環境・社会問題への対応を考慮した投融資を促進するための議論が進められています。

ローカル・ゼブラ企業の今後の展望:持続可能な社会の実現に向けて

ローカル・ゼブラ企業は、地域社会のニーズを捉え、その解決に貢献することで、持続可能な社会の実現に貢献することが期待されています。

今後、ローカル・ゼブラ企業がさらに発展していくためには、以下のような取り組みが重要となります。

  • 社会的インパクトの可視化: 投資家や消費者に対して、事業を通じて生み出される社会的インパクトを分かりやすく示すことで、資金調達や顧客獲得を促進する。
  • 地域連携の強化: 地域の企業、行政、大学などと連携し、地域全体の課題解決に貢献することで、事業の成長を加速させる。
  • 人材育成: 地域課題解決に意欲を持つ人材を育成し、事業の担い手を確保することで、長期的な成長を支える。

ローカル・ゼブラ企業は、従来の企業像にとらわれず、社会課題解決と経済成長を両立させることで、地域社会に新たな価値を提供する存在です。今後、より一層の注目が集まり、その数はますます増加していくことが予想されます。

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【参考URL】

中小企業庁: https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki_kigyou_kyousei/2024/20240301_01.pdf

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著者情報

佐治 英樹(さじ ひでき)
佐治 英樹(さじ ひでき)税理士(名古屋税理士会), 行政書士(愛知県行政書士会), 宅地建物取引士(愛知県知事), AFP(日本FP協会)
「税理士業はサービス業」 をモットーに、日々サービスの向上に精力的に取り組む。
趣味は、筋トレとマラソン。忙しくても週5回以上走り、週4回ジムに通うのが健康の秘訣。

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