
「なぜこの店は続いているのか」
「なぜこの商品は安く見えるのか」
「なぜこの会社は昔から選ばれているのか」
身近な会社やお店を見ていると、ふと気になることがあります。
ただ、その疑問を単なる雑学で終わらせるのは少しもったいないことです。創業前後の方にとって、身近な会社の仕組みを読むことは、自分の事業計画を見直す練習にもなります。
このシリーズでは、名古屋・愛知にゆかりのある会社を題材にして、商売の仕組みを創業者目線で分解します。
扱うのは、企業のすごさを紹介する記事ではありません。投資判断のための企業分析でもありません。
このシリーズは、名古屋・愛知発の会社を入口にして、売上・原価・固定費・在庫・運転資金・リピート・店舗展開などを、自分の事業計画に置き換えて考えるための読み物です。
このシリーズで答えていくのは、次のような問いです。
- 誰が、何に、なぜお金を払っているのか
- どこで売上が生まれているのか
- どこで粗利を残しているのか
- 固定費や人件費はどこで重くなるのか
- 在庫や運転資金はどこで必要になるのか
- 自分が同じような商売を始めるなら、何を確認すべきか
創業融資の事業計画では、「やりたいこと」だけでなく、売上の根拠、原価、固定費、運転資金、返済計画まで説明する必要があります。このシリーズは、身近な会社を入口にして、そうした事業計画の見方を身につけるための読み物です。
業種別開業ガイドではなく、「商売の見方」を学ぶシリーズです
創業準備では、業種ごとの開業情報を調べることも大切です。たとえばJ-Net21の「業種別開業ガイド」は、業種・職種ごとの開業準備を調べるための参考になります。
このシリーズは、そうした業種別の開業ガイドと同じ役割を目指すものではありません。
「飲食店を始めるには」「小売業を始めるには」「食品メーカーを始めるには」という業種別の手順をまとめるのではなく、実在する会社や商売を題材にして、事業構造を見るための考え方を整理します。
たとえば、コメ兵を見るときは「中古ブランド店の開業方法」ではなく、買取・査定・在庫・資金繰りを見ます。スガキヤを見るときは「ラーメン店の始め方」ではなく、低価格を支えるメニュー構成や標準化を見ます。シヤチハタを見るときは「印章業の始め方」ではなく、顧客が本当に買っている価値を見ます。

このシリーズで扱う5つの会社
このシリーズでは、まず次の5社を取り上げます。
| 会社・ブランド | このシリーズで見るポイント | 創業者が持ち帰る視点 |
|---|---|---|
| コメ兵(こめひょう) | 買取・査定・在庫・資金繰り | 売る前に、どう仕入れるか |
| スガキヤ | 低価格・メニュー構成・標準化 | 安く売るなら、商品単体ではなく全体設計で見る |
| シヤチハタ(シャチハタ) | 顧客価値・承認・証明・デジタル化 | 商品名ではなく、顧客が本当に買っている価値を見る |
| CoCo壱番屋 | 店舗展開・FC・人材育成 | 店舗を増やすには、人と仕組みが必要になる |
| ミツカン | 定番商品・用途提案・リピート | 商品は使われ方と習慣化まで設計する |
どの会社も、名古屋・愛知にゆかりがあります。ただし、このシリーズでは「地元企業だからすごい」と紹介するのではありません。
地域性は入口です。本当に見たいのは、それぞれの会社から学べる商売の型です。
シリーズ記事一覧
リユース業・小売業・在庫を持つ事業で重要になる、買取・査定・在庫・資金繰りの見方を整理します。
低価格の商品やサービスを、原価だけでなく、客単価・回転率・メニュー構成・標準化まで含めて考えます。
商品名ではなく、顧客が本当に買っている価値を見直し、売上モデルや顧客価値の考え方へつなげます。
飲食店や店舗型ビジネスで、多店舗展開・人材育成・オペレーションをどう考えるかを整理します。
食品・調味料・加工品などで、使い方の提案、リピート、在庫、製造、資金繰りをどう見るかを整理します。
どの記事から読めばよいか
自分の事業に近いテーマから読むのがおすすめです。
| 今考えている事業・悩み | まず読む記事 |
|---|---|
| 在庫を持つ小売業を始めたい | コメ兵 |
| 中古品・買取ビジネスを考えている | コメ兵 |
| 低価格の商品やサービスを出したい | スガキヤ |
| 飲食店の売上予測を考えたい | スガキヤ、CoCo壱番屋 |
| 将来、店舗を増やしたい | CoCo壱番屋 |
| フランチャイズや多店舗展開に関心がある | CoCo壱番屋 |
| 自分の商品価値を言語化したい | シヤチハタ |
| BtoBサービスや月額課金を考えている | シヤチハタ |
| 食品・調味料・加工品を作りたい | ミツカン |
| リピート商品を作りたい | ミツカン |
5本を順番に読む場合は、コメ兵、シヤチハタ、スガキヤ、CoCo壱番屋、ミツカンの流れがおすすめです。仕入れ・在庫、顧客価値、低価格設計、店舗展開、リピートの順に読むと、飲食・食品だけに偏らず、商売を見る視点を広げやすくなります。
各記事で共通して見る5つの問い
このシリーズでは、会社ごとにテーマは違います。ただし、共通して見る問いは同じです。
1. 誰が、何にお金を払っているのか
商品名だけを見ると、商売の本質を見誤ることがあります。
たとえば、シヤチハタは「ハンコ」を売っているように見えます。しかし、顧客目線では、確認・承認・証明を残す価値を買っているとも考えられます。
自分の事業でも、「何を売るか」だけでなく、「お客様は何を済ませたいのか」を考える必要があります。
2. 売上はどのように生まれるのか
売上は、単に「売れそうです」では説明できません。
飲食店なら、客数、客単価、席数、回転率。小売業なら、販売点数、平均単価、在庫回転。食品事業なら、新規購入、リピート購入、業務用取引先。BtoBサービスなら、契約数、月額単価、継続率。
このように、売上を分解して考えることが大切です。
3. 粗利はどこで残るのか
売上があっても、原価や仕入れが重ければ利益は残りません。
コメ兵なら、買取価格と販売価格の差だけでなく、査定、商品化、在庫、販売チャネルまで見ます。スガキヤやCoCo壱番屋なら、材料費、人件費、家賃、客単価、回転率を見ます。ミツカンのような食品事業なら、原材料費、包材費、製造費、配送費、在庫を見ます。
粗利を見るときは、「売れた後にいくら残るか」を具体的に考える必要があります。
4. どこで資金が詰まりやすいのか
黒字でも資金繰りが苦しくなることがあります。
在庫を先に仕入れる事業では、商品が売れるまで資金が寝ます。食品事業では、原材料、包材、製造、在庫、売掛金が先行することがあります。飲食店では、開業後すぐに家賃、人件費、材料費、返済が発生します。
創業融資では、売上予測だけでなく、運転資金の見込みが重要になります。
5. 自分の事業に置き換えると何を見るべきか
大企業や有名企業の事例を、そのまま真似することはできません。
大切なのは、同じ規模を目指すことではなく、考え方を自分の事業に置き換えることです。
- 自分なら、誰から売上を得るのか
- 自分なら、どの商品やサービスで粗利を残すのか
- 自分なら、どの固定費が重くなるのか
- 自分なら、どのタイミングで資金が足りなくなるのか
- 自分なら、融資担当者に何を根拠として説明できるのか
この問いを持って読むと、身近な会社の見方が変わります。
日本政策金融公庫の経営指標を「検算」に使う
各記事では、日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」にも触れています。
この調査は、決算データをもとに小企業の収益性や生産性などの指標値を業種別に集計したものです。
ただし、大企業の事例と小企業の経営指標を直接比べることはできません。
このシリーズで経営指標を使う目的は、「あの会社と同じ数字を目指すこと」ではありません。自分の事業計画が、小規模事業として無理のない水準かを検算するためです。
| 事業タイプ | 見たい項目 |
|---|---|
| リユース・小売業 | 売上総利益率、在庫、借入金、回転期間 |
| 飲食店 | 材料費、人件費、地代家賃、客単価、回転率 |
| BtoBサービス | 契約数、継続率、開発費、サポート人件費 |
| 食品製造 | 原材料費、外注費、設備投資、在庫、売掛金 |
| 店舗型事業 | 家賃、人件費、営業日数、席数、回転率、返済額 |
指標は正解ではありません。自分の計画を見直すための比較材料として使うことが大切です。
創業融資の事業計画に置き換えるなら
身近な会社のビジネスモデルを読む目的は、「面白かった」で終わることではありません。
創業前後の方にとって重要なのは、自分の事業計画に置き換えることです。
創業融資を考える場合は、少なくとも次の点を整理しておきましょう。
| 確認すること | 事業計画で説明したい内容 |
|---|---|
| 売上の根拠 | 誰に、何を、いくらで、どれくらい売るのか |
| 原価の根拠 | 仕入れ、材料費、外注費、配送費などを見込めているか |
| 固定費 | 家賃、人件費、水道光熱費、システム費用などを払えるか |
| 運転資金 | 売上が入る前に必要な支払いを何か月分確保するか |
| 在庫 | 商品や原材料をどれくらい持つ必要があるか |
| 人材 | 自分以外の人が関わる場合、教育や人件費を見込んでいるか |
| 返済計画 | 利益と資金繰りから無理なく返済できるか |
| リスク対応 | 売上が計画を下回った場合に、何を見直すか |
創業融資の審査では、事業の魅力だけでなく、計画の現実性も見られます。
「この商品は良い」「この店は流行りそう」「このサービスは便利」という説明に加えて、数字で説明できる計画にすることが大切です。
よくある質問
Q. このシリーズは、名古屋・愛知の有名企業を紹介する記事ですか?
A. 企業紹介が目的ではありません。名古屋・愛知にゆかりのある会社を入口にして、創業者が売上、原価、在庫、運転資金、顧客価値などを考えるためのシリーズです。
Q. 取り上げている会社と同じ業種でないと参考になりませんか?
A. 同じ業種でなくても参考になります。大切なのは、企業の形をそのまま真似することではなく、「誰が何にお金を払うのか」「どこで資金が必要になるのか」という見方を自分の事業に置き換えることです。
Q. 創業融資の事業計画にも使えますか?
A. はい。売上の根拠、原価、固定費、在庫、運転資金、返済計画を整理するための考え方として使えます。ただし、実際の事業計画では、自分の業種・規模・資金状況に合わせて数字を作る必要があります。
Q. 日本政策金融公庫の経営指標は、どう使えばよいですか?
A. 正解として使うのではなく、自分の事業計画が小規模事業として無理のない水準かを確認するための検算材料として使います。大企業の数値と直接比べるのではなく、自分の計画の前提を見直すために使うことが大切です。
まとめ
このシリーズは、名古屋・愛知発の会社を紹介するだけの企画ではありません。身近な会社を題材にして、創業者が自分の商売を見るための問いを持つことが目的です。
5本の記事で扱う視点は、それぞれ違います。
- コメ兵:仕入れ、買取、在庫、資金繰り
- スガキヤ:低価格、メニュー構成、標準化
- シヤチハタ:顧客価値、承認、証明、売上モデル
- CoCo壱番屋:店舗展開、FC、人材育成
- ミツカン:定番商品、用途提案、リピート
創業を考えるときは、自分のアイデアだけを見つめていると、売上や資金繰りの見落としが起きやすくなります。身近な会社の仕組みを分解してみると、自分の事業計画でも確認すべき点が見えやすくなります。
創業融資の事業計画づくりをサポートします
名古屋創業融資支援オフィス@本山では、創業融資を検討されている方に向けて、売上予測、原価、固定費、在庫、運転資金、返済計画の整理を支援しています。
事業アイデアを形にする段階では、「何をしたいか」だけでなく、「誰が、何に、いくら支払い、その売上でどの費用をまかなうのか」を整理することが大切です。
参考資料
免責事項
この記事は、公開情報および当サイトの創業融資支援に関する一般的な知見をもとに作成しています。特定企業への投資判断、個別企業の収益性の断定、または特定業種での成功を保証するものではありません。実際の創業計画、資金調達、税務・法務判断については、個別の状況に応じて専門家へご相談ください。




















