
スガキヤは、名古屋・東海圏の人にとっては非常に身近な存在です。
ラーメンを食べに行く店であり、ソフトクリームやクリームぜんざいを食べる店でもあります。
「ラーメンと甘味が同じ店にある」という組み合わせも、東海圏では自然に受け止められているかもしれません。
しかし、創業者・事業主目線で見ると、ここには大事な問いがあります。
低価格の商品を出しながら、どうやって店舗ビジネスとして成り立たせるのか。
この記事では、スガキヤを「安いからすごい店」として見るのではなく、創業前後の方が飲食店や低価格サービスを考えるときの参考事例として見ていきます。
結論から言うと、スガキヤから学べるのは、安く売るなら、商品単体ではなく、メニュー構成、立地、回転率、作業標準化、追加注文の設計まで一体で見る必要があるということです。
身近な会社を題材に、売上・原価・在庫・運転資金・顧客価値など、創業者が事業計画を見るための視点を整理するシリーズです。
スガキヤはどのような会社か
スガキヤを運営するスガキコシステムズ株式会社は、名古屋市中区丸の内に本社を置く会社です。公式の会社概要では、創業は1946年3月、年商は123億28百万円、従業員数は3,249名、店舗・営業所は東海地区、関西地区、静岡地区、インドネシアとされています。いずれも2025年3月期または2025年3月末実績です。
現在の公式メニューを見ると、2026年6月確認時点で、ラーメンは430円、ミニラーメンは290円、クリームぜんざいは290円、ソフトクリームはレギュラー190円・ミニ140円などと掲載されています。メニューには、麺類、甘味、セットメニュー、サイドメニュー、トッピングなどが並んでいます。
この価格だけを見ると、「なぜこの価格で続けられるのか」と感じる人もいるはずです。
ただし、ここで原価率や利益率を推測で断定してはいけません。
公開情報から読めるのは、スガキヤが低価格を大切にしていること、ラーメンと甘味を組み合わせていること、長い時間をかけて店舗展開や商品開発を続けてきたことです。
スガキヤは、最初からラーメン店だったわけではない
スガキヤの歴史を見ると、1946年に寿がきやの元祖となる飲食店を開店した際、最初は「甘党の店」として、ぜんざい、パン、焼き芋、蒸し芋、芋まんじゅうなどを販売していました。その後、1948年にメニューにラーメンが加わり、「甘党とラーメンの店」寿がきや1号店がスタートしています。
公式サイトの「スガキヤのこだわり」でも、開業当時は甘いものを提供しており、屋号がないころはお客様から「甘党の店」と呼ばれていたこと、その後ラーメンを提供するようになり、屋号を「寿がきや」としたことが説明されています。
創業者目線では、ここが重要です。
飲食店を考えるとき、メイン商品だけを見ていると視野が狭くなります。
スガキヤの場合、「ラーメン店」としてだけ見るより、軽食と甘味というユニークな組み合わせで、日常利用の店を目指したとして見る方が、商売の構造を理解しやすくなります。
低価格を支えるのは、商品単体ではなく「全体設計」
スガキヤの経営方針では、低価格で高品質な商品を提供すること、品質と価格のバランスを管理することが掲げられています。また、徹底した品質管理と無駄の排除により、安価で高品質なラーメンと甘味を提供し続けることが成長の原動力だと説明されています。
トップメッセージでも、スガキヤにとって「安さ」はブランドの重要な価値であり、物価高騰が続く中でも「お値打ち価格」を大切にしていることが述べられています。
ただし、ここから「原価が安いから成立している」と結論づけるのは早すぎます。
飲食店の低価格は、原材料費だけで決まるものではありません。
低価格の商品を出す場合、少なくとも次の要素を一体で見る必要があります。
| 見るべき要素 | 内容 |
|---|---|
| 商品構成 | ラーメン、甘味、セット、サイド、トッピングをどう組み合わせるか |
| 客単価 | 1品だけで終わるのか、追加注文があるのか |
| 回転率 | 短時間利用か、長時間滞在型か |
| 立地 | 商業施設、フードコート、駅近、郊外など、客数の取り方が変わる |
| 作業標準化 | メニュー数、調理工程、提供時間をどう管理するか |
| 人件費 | 少人数で回せる設計になっているか |
| 原材料・仕込み | 品質と価格を両立するために、どこまで仕組み化できるか |
| 家賃・共益費 | 立地によって売上も固定費も大きく変わる |
スガキヤの事例から学ぶべきなのは、「安くすればお客様が来る」という単純な話ではありません。
低価格を選ぶなら、低価格でも回るように、店舗全体の設計を整える必要があるということです。

ラーメンと甘味の組み合わせをどう見るか
スガキヤの公式メニューでは、麺類だけでなく、甘味、セットメニュー、サイドメニュー、トッピングが掲載されています。たとえば、ラーメン、ミニラーメン、クリームぜんざい、ソフトクリーム、五目・ミニソフトセット、トッピングなどがあります。
甘味を「利益を出すための商品」と断定しないことが大切です。公開情報だけでは、商品ごとの利益率や原価率は確認できません。
ただし、創業者目線では、ラーメンと甘味の組み合わせから次のような見方ができます。
| 商品の見方 | 創業者が学べること |
|---|---|
| ラーメン | 来店の主目的になりやすい商品 |
| ミニラーメン | 子ども、軽食、甘味との組み合わせに使いやすい商品 |
| ソフトクリーム・クリームぜんざい | 食後や休憩需要を拾える商品 |
| セットメニュー | 客単価を上げながら、注文を分かりやすくする商品 |
| トッピング | 少額追加で客単価を調整しやすい商品 |
低価格ビジネスでは、看板商品だけで収支を考えると危険です。
実際の事業計画では、「どの商品が来店理由になるのか」「どの商品が追加注文につながるのか」「どの商品が時間帯を広げるのか」を分けて考える必要があります。
たとえば、ラーメンを食べたい人だけを想定するのか、親子で軽く食べる場面を想定するのか、買い物途中の休憩を想定するのかで、必要なメニュー構成は変わります。
標準化は、安さを支える重要な考え方になる
スガキヤの公式サイトでは、麺について、メニューに合わせて開発されたオリジナルの小麦粉を使用し、工場でいくつもの工程を経て製麺していると説明されています。スープについても、東海エリアの人たちが慣れ親しんだ和風とんこつスープとして紹介されています。
また、沿革では、1969年に初のショッピングセンター出店としてユニー大曽根店に出店し、その後ショッピングセンター出店を重ねたことが説明されています。1977年には、事業規模の拡大に対応するため、名古屋市中川区にキッチンセンターを竣工したことも記載されています。
これらは過去の沿革も含む情報ですが、創業者が見るべきポイントは明確です。
低価格の商品を安定して提供するには、現場の努力だけに頼るのではなく、商品・工程・提供方法を標準化する必要があります。
小さな飲食店でも、標準化は大企業だけの話ではありません。
| 標準化するもの | 小さな飲食店での例 |
|---|---|
| レシピ | 誰が作っても味が大きくぶれない分量にする |
| 仕込み | 開店前、ピーク前、閉店前の作業を決める |
| メニュー数 | 作業が複雑になりすぎない範囲に絞る |
| 提供手順 | 注文から提供までの流れを短くする |
| 原材料 | できるだけ複数メニューで共通利用する |
| 教育 | 新人でも一定水準で作業できるようにする |
安く売るためには、気合いや人件費の我慢だけでは長続きしません。
低価格を続けるには、現場の作業が複雑になりすぎない設計が必要です。
自分が低価格の飲食店を始めるなら、ここを見る
スガキヤのような規模の会社と、創業直後の小さな飲食店では、資金力、知名度、仕入れ条件、店舗網がまったく違います。
そのため、スガキヤの数字や形をそのまま真似することはできません。
創業者が参考にすべきなのは、規模そのものではなく、次のような考え方です。
| スガキヤの事例から学べること | 自分の事業に置き換えるときの問い |
|---|---|
| 低価格を大切にしている | 安く売る理由は明確か。安さ以外の価値はあるか |
| ラーメンと甘味を組み合わせている | 主力商品と追加注文の商品を分けて考えているか |
| 甘味から始まった歴史がある | 自店の利用シーンは食事か、休憩か、軽食か |
| ショッピングセンター出店の歴史がある | 立地は客数を取る場所か、目的来店を狙う場所か |
| 工場での製麺など標準化された工程がある | 自店で標準化できる作業は何か |
| 「お値打ち」を重視している | 安さと品質のバランスを、どう説明できるか |
特に、低価格の飲食店では「客数が増えれば大丈夫」と考えがちです。
しかし、客数が増えるほど、仕込み、調理、提供、片付け、スタッフ教育の負担も増えます。
創業計画では、次のように売上を分解して考える必要があります。
月間売上
= 1日の客数 × 平均客単価 × 営業日数
店内飲食型であれば、さらに次のように見ることもできます。
1日の売上
= 席数 × 回転数 × 平均客単価
ただし、スガキヤのようなフードコート型・商業施設型の店舗と、個人の路面店では条件が異なります。
同じ「飲食店」でも、席数、家賃、営業時間、通行量、ピーク時間、テイクアウト比率によって、必要な売上は大きく変わります。
当サイトの「融資審査を突破する!説得力のある売上予測の立て方」でも、飲食業の売上予測は「客単価×席数×回転数」などに分解して考えることが重要だと説明しています。スガキヤのような低価格業態を見るときも、価格だけではなく、客数・客単価・回転率を分けて見ることが必要です。
飲食業の売上予測を、客単価・席数・回転数などに分解して考えるための関連記事です。
低価格の飲食店を始めるなら、どの数字を見るか
自分の事業計画に置き換えるときは、日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」も参考になります。
この調査は、決算データをもとに小企業の収益性や生産性などの指標値を業種別に集計したものです。2023年度調査には、飲食店・宿泊業、卸売・小売業、サービス業などが含まれ、飲食店・宿泊業の調査結果も掲載されています。
スガキヤのような大規模チェーンの数値を、小さな飲食店に直接当てはめることはできません。
参考にすべきなのは、同じ数字を目指すことではなく、自分の計画が小規模飲食店として無理のない水準かを検算することです。
低価格の飲食店を始めるなら、次のような項目を見ます。
| 見る指標・項目 | 事業計画での使い方 |
|---|---|
| 売上高総利益率 | 材料費を差し引いた後に、どれだけ粗利が残るかを見る |
| 材料費率 | 低価格でも、原材料の値上がりに耐えられるかを見る |
| 人件費率 | 少人数で回せる設計になっているかを見る |
| 地代家賃 | 客単価に対して、家賃が重すぎないかを見る |
| 客単価 | 1人あたりの注文額が想定どおりかを見る |
| 回転率 | 席数に対して、1日に何回転できるかを見る |
| 営業日数・営業時間 | ピーク時間以外にも売上を作れるかを見る |
| 借入返済 | 利益から返済できる計画かを見る |
| 運転資金 | 材料費、人件費、家賃を何か月分確保するかを見る |
ここで重要なのは、「低価格だから客数が取れるはず」と考えないことです。
低価格業態では、客数が取れなかった場合の影響が大きくなります。
客単価が低いほど、固定費を回収するために必要な客数が増えるからです。
融資担当者なら、どこを見るか
低価格の飲食店で創業融資を受ける場合、融資担当者は「安くておいしい」という説明だけでは判断できません。
確認されやすいのは、次のような点です。
| 見られやすい点 | 説明できるようにしたいこと |
|---|---|
| 売上の根拠 | 1日何人が来店し、平均いくら使うのか |
| 客数の根拠 | 立地、通行量、近隣住民、商業施設、競合状況をどう見ているか |
| 客単価の根拠 | 主力商品だけでなく、セット・サイド・追加注文をどう見込むか |
| 原価の根拠 | 材料費が上がっても粗利が残るか |
| 人件費の根拠 | ピーク時と閑散時を何人で回すか |
| 家賃の重さ | 売上に対して固定費が重すぎないか |
| オペレーション | メニュー数や工程が複雑すぎないか |
| 資金繰り | 開業後、赤字月が出ても何か月持つか |
| 価格改定余地 | 値上げが必要になったとき、顧客に受け入れられる価値があるか |
低価格の飲食店は、売上が大きく見えても、材料費、人件費、家賃、水道光熱費、借入返済を差し引くと、手元に残る資金が限られる場合があります。
そのため、創業計画では「月商いくらを目指すか」だけでなく、何人で回し、いくらの粗利を残し、何か月で借入を返済できるかまで説明する必要があります。
スガキヤの事例を、自分の事業に置き換えるときの注意点
ここまで、スガキヤの公開情報をもとに、低価格飲食店の見方を整理してきました。
ただし、スガキヤの事例をそのまま小規模な創業計画に当てはめることはできません。
スガキヤには、長年のブランド認知、店舗運営の蓄積、商品開発、教育、グループとしての食品事業などがあります。
創業直後の飲食店が、最初から同じ前提で計画を作るのは現実的ではありません。
また、公開情報だけでは、次のような点は確認できません。
- 商品別の原価率
- 店舗別の利益率
- 家賃や共益費の水準
- 商品ごとの販売数
- 甘味がどの程度、客単価や利益に貢献しているか
- フードコート型店舗と路面店の収益差
- 海外店舗の詳細な収益構造
そのため、スガキヤを「低価格でも儲かる店」と読むのではなく、低価格で売るなら、商品構成・立地・回転率・標準化・固定費まで一体で見る必要があると読む方が、創業計画には役立ちます。
まとめ
スガキヤから創業者が学べるのは、「安いラーメン店」という表面的な見方ではありません。
本当に見るべきなのは、次の構造です。
- 低価格は、商品単体ではなく店舗全体の設計で考える
- ラーメンと甘味の組み合わせは、利用シーンや客単価を見る材料になる
- 安く売るなら、作業標準化とメニュー設計が重要になる
- 客単価が低いほど、必要な客数や回転率の検証が重要になる
- 創業融資では、売上予測だけでなく、原価、人件費、家賃、運転資金、返済計画を説明する必要がある
低価格の飲食店を始めるなら、「安くすれば来店してもらえるはず」と考えるだけでは不十分です。
誰が、何を、いくらで、どの頻度で買い、どの固定費をまかなえるのかまで事業計画に落とし込む必要があります。
よくある質問
Q. スガキヤの安さの理由を、原価率で説明してもよいですか?
A. この記事では、原価率や商品別利益率を推測で断定しません。公開情報から安全に言えるのは、低価格を大切にしていること、ラーメンと甘味を組み合わせていること、標準化や店舗全体の設計が重要だという点です。
Q. 甘味は利益を出すための商品だと言えますか?
A. 断定はできません。公開情報だけでは、甘味の商品別原価率や利益率は確認できません。創業者目線では、甘味を「食後や休憩需要を拾う商品」「客単価や利用シーンを考える材料」として見るのが安全です。
Q. 低価格の飲食店を始めるとき、一番注意すべき数字は何ですか?
A. 客単価だけでなく、客数、回転率、材料費、人件費、家賃、運転資金、借入返済をまとめて見る必要があります。低価格業態では、客数が想定を下回ったときに固定費を回収しにくくなるためです。
Q. スガキヤの事例は、小さな飲食店にもそのまま使えますか?
A. そのまま当てはめることはできません。スガキヤには長年のブランド認知、店舗運営の蓄積、商品開発や標準化の仕組みがあります。小規模事業では、考え方だけを取り出し、自分の立地、客層、客単価、固定費に置き換えて検算することが大切です。
参考資料
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飲食店、低価格サービス、店舗型ビジネスで創業を考えている方は、まず「売上が立つか」だけでなく、「その価格で固定費と返済をまかなえるか」を確認することが大切です。
名古屋創業融資支援オフィス@本山では、売上予測、原価、人件費、家賃、運転資金、返済計画の整理を支援しています。
免責事項
この記事は、2026年6月時点で確認できる公開情報をもとに、創業者・事業主向けに商売の見方を整理したものです。スガキヤ、スガキコシステムズ株式会社、その他掲載企業の投資判断、収益性、商品別利益率、原価率、個別店舗の採算を分析・保証するものではありません。
創業融資、事業計画、税務、許認可、食品衛生、資金繰りに関する判断は、事業内容や地域、時期によって異なります。実際の申請・開業準備では、最新の公的情報を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。




















