名古屋市で4号随契認定の申請開始|スタートアップ向け要件・買い手部署・資金計画

名古屋市のスタートアップ向け4号随契認定について、「自治体向け」という提案を行政課題・担当部署・使用場面まで具体化する視点を示したメインビジュアル

自治体向けの商品やサービスを持つ名古屋のスタートアップに、具体的な申請機会が生まれています。

名古屋市は2026年8月20日、スタートアップを対象とする「新事業分野開拓者認定制度」の創設を発表しました。要綱は9月1日に施行され、初回申請期間は9月1日から10月31日まで、認定は12月頃の予定です。

この制度を使うと、名古屋市は認定した事業者の新しい商品・サービスを「4号随契」で調達できるようになります。

前回の記事では、4号随契の基本と、ある自治体で確認された実施計画を次の自治体へ生かす仕組みを解説しました。今回、名古屋市が公開した第1回募集要項と申請様式まで確認すると、申請準備の出発点がさらに具体的に見えてきます。

名古屋市の様式では、実際に調達を検討している市の部署名と、その部署との連絡・調整状況を記載します。市側も、その部署への庁内ヒアリング結果などを記入する構成です。

この記事で確認すること

名古屋市の制度によって公共調達への入口は増えます。この記事では、申請条件、買い手候補となる部署、供給・保守体制、資金計画を順に確認します。

名古屋市で始まった4号随契認定とは

4号随契とは、自治体が新しい商品・サービスと実施計画を確認して事業者を認定し、その認定に係る商品・サービスを競争入札によらず調達できる仕組みです。

認定は、会社に包括的な資格を与えるものではありません。特定の商品・サービスと、その提供方法や必要資金を示した実施計画に紐づきます。同じ会社の別商品まで自動的に対象になるわけではありません。

2026年は、愛知県が6月に認定制度とAi-PACTの募集を始めました。 国も7月の日本成長戦略と8月4日の自治体向け通知で、既存の4号随契の活用促進を打ち出しました。

名古屋市の制度は国の8月4日通知より前から令和8年度施策として計画されていました。こうした動きを並べると、2026年は、国・愛知県・名古屋市で公共調達促進策がそれぞれ具体化した年と整理できます。

自社が申請対象になるかを先に確認する

名古屋市の制度には、市独自の対象要件があります。初回申請を検討する場合は、少なくとも次の項目を確認します。

  • 認定日に名古屋市内の拠点があること
  • 法人設立後10年以内の未上場株式会社であること
  • 申請時において販売開始から5年以内の新商品・新サービスがあること
  • 申請者が自ら生産・提供する新商品・新サービスであること
  • 名古屋市が調達を検討している商品・サービスであること
  • J-Startup選定など、所定の申請資格のいずれかに該当すること

申請様式では、商品について自社生産・共同生産・委託生産、サービスについて自社提供・一部委託提供の区分を示します。委託がある場合は、委託先や内容、生産・提供方法も記載します。

申請資格には、J-Startup、J-Startup CENTRAL、名古屋市が定める社会実証事業等で課題解決に資する結果を得た事業者、他自治体による4号随契認定などがあります。名古屋市の募集要項では、市の指定する実証事業や、Ai-PACTで名古屋市がトライアル発注し、そのトライアルを完了した事業者も示されています。

会社形態、設立時期、販売開始時期、生産・提供主体などの対象要件を満たさない場合や、所定の申請資格のいずれにも該当しない場合は、申請対象になりません。最初に対象要件と自社が該当する申請資格を確かめると、買い手部署との調整や書類準備に進むべきかを判断しやすくなります。

申請準備は「買い手部署」から具体化する

名古屋市の申請様式は、商品・サービスの新しさだけを説明する構成にはなっていません。

申請者は、名古屋市での使用方法に加えて、具体的に調達を検討している部署名と、その部署との連絡・調整状況を記載します。市側には担当部署への庁内ヒアリング結果等の記入欄も設けられています。

申請前には、次の4つの問いを一続きで整理します。

  1. 名古屋市のどの行政課題を解決するのか
  2. その課題を担当する部署はどこか
  3. 誰が、どの場面で商品・サービスを使うのか
  4. 担当部署と、どこまで連絡・調整できているか

「自治体の業務を効率化する」といった広い説明だけでは、使用部署や利用場面が定まりません。対象業務、利用者、現在の負担、導入後に確認したい効果まで具体化すると、担当部署も使用方法を検討しやすくなります。

行政課題の候補がまだ見えていないときは、当事務所も会員として参加しているNAGOYA FRONTIERの「提案募集中の課題」をのぞいてみるのもよいでしょう。名古屋市が実際に挙げている困りごとに加えて、担当課や想定する解決策なども掲載されています。自社の商品・サービスと行政課題との接点を考える手掛かりになります。なお、ここに掲載されているのは公民連携の提案課題であり、4号随契の募集一覧ではありません。

提出必須の様式とは別に、事前準備として次の内容を1枚にまとめておく方法もあります。

  • 解決したい行政課題
  • 買い手候補となる部署
  • 実際の使用場面
  • 導入範囲と確認したい効果
  • 現在の連絡・調整状況

対象要件を確認したら、申請書を作り込む前に、行政課題と買い手部署の対応関係を固めます。

愛知県・名古屋市・Ai-PACTは役割が異なる

2026年に始まった愛知県の制度、名古屋市の制度、Ai-PACTは、買い手と手続の段階が異なります。

制度・事業 主な相手 得られるもの
名古屋市の認定制度 名古屋市 市が認定に係る商品・サービスを4号随契で調達できる状態
愛知県の認定制度 愛知県 県が認定に係る商品・サービスを4号随契で調達できる状態
Ai-PACT 愛知県・県内市町村 試用と効果検証の機会。本格調達につなげるためのトライアル

愛知県の認定だけで、名古屋市の4号随契対象になるわけではありません。県にも市にも4号随契で販売したい場合は、それぞれの認定が必要です。Ai-PACTも試用の仕組みであり、採択やトライアルだけで4号随契の認定が完了するものではありません。

他自治体の認定で引き継げる部分

他自治体の認定を受けている場合、重要事項に変更がなければ、確認済み実施計画の写しを名古屋市への申請に使える場合があります。名古屋市の募集要項では、他自治体による認定結果が分かる通知書等もあわせて添付するよう示されています。

一方で、市内拠点、買い手部署、使用方法、必要書類など、名古屋市独自の確認は残ります。名古屋市の認定期間も、元の自治体の認定期間を超えることはできません。県認定を取得してから名古屋市の初回締切へ進む日程には、現時点で不確実性があります。

認定後の契約を支える実行体制と資金計画

公共調達を考えるときは、試用・認定・契約を別の段階として捉えます。

試用
Ai-PACTなどで自治体が商品・サービスを使い、有用性を確認する段階です。
認定
自治体が特定の商品・サービスと実施計画に係る事業者を認定する段階です。
契約
必要性、予算、価格、仕様、供給・履行体制などを個別に判断する段階です。

名古屋市と愛知県は、認定によって購入や契約を保証していません。認定後も、調達する部署による予算や仕様の検討が残ります。

名古屋市の実施計画では、必要資金額と調達方法に加えて、生産・提供体制、保守管理、秘密情報の管理、競合環境と優位性、導入実績などを説明します。申請時点から、契約後も継続して提供できるかを確認する設計です。

認定後も、実施計画を変更するときの承認申請、記載事項の変更届、事業を中止するときの届出、報告・調査への対応が必要になる場合があります。計画と実際の提供体制を継続して管理する担当者も決めておきます。

資金計画では、次の3つの場面を分けて考えます。

  1. 申請・調整中に必要となる開発費や人件費
  2. 契約後の導入、供給、保守に必要となる運転資金
  3. 契約時期や金額が想定からずれた場合に必要となる資金

認定前の段階では、自治体との契約を確定売上として置かず、契約が遅れる場合や成立しない場合も含めて資金繰りを確認します。

創業融資を検討する場合も、どの行政課題に対して何を提供し、いつ、何に資金を使い、どこから返済原資を得るのかを同じ時間軸で説明できることが大切です。公共調達の可能性と、その準備に必要な資金を一つの事業計画へつなげます。

初回申請に向けた確認順

名古屋市への初回申請を検討する場合は、次の順で確認すると、制度説明から実務へ移りやすくなります。

STEP 1
会社、商品・サービス、申請資格の対象要件を確認する

STEP 2
解決する行政課題と買い手候補の部署を特定する

STEP 3
使用場面、導入範囲、期待する効果を整理する

STEP 4
供給・保守・情報管理の体制と資金計画を確認する

STEP 5
登記事項証明書、定款、決算資料、納税証明書などをそろえ、最新の募集要項と記載例で申請内容を確定する

申請準備の要点

名古屋市への申請では、対象要件を確かめたうえで、行政課題と買い手部署を結び、契約後まで支えられる提供体制と資金計画を示すことが重要です。

よくある質問

Q. 愛知県の認定を受ければ、名古屋市にも4号随契で販売できますか?

A. 愛知県の認定と名古屋市の認定は別です。県にも市にも4号随契で販売したい場合は、それぞれの認定が必要です。県認定は名古屋市の「他自治体認定」ルートとして利用できる可能性がありますが、市内拠点や買い手部署などの市独自要件は残ります。

2026年9月1日時点で、愛知県公式サイトの「認定の状況」には「現在事例はありません」と掲載されています。県認定を取得してから名古屋市の10月31日締切へ進む計画には日程上の不確実性があります。名古屋市で利用できる別の申請資格と、県・市を並行して準備できるかも確認してください。

Q. Ai-PACTに採択されれば、認定まで完了しますか?

A. Ai-PACTは試用と効果検証を行う事業です。名古屋市では、Ai-PACTにおいて名古屋市からトライアル発注を受け、そのトライアルを完了した事業者が申請資格の一つとして示されています。認定申請と契約は、その後の別の段階です。

Q. J-Startup選定企業は、学識経験者への意見聴取を省略できますか?

A. 国の8月4日通知では、J-Startupの選定時に行われる審査について、一定の場合に4号随契認定時の学識経験者への意見聴取と同等の効果が得られるものとして取り扱う考え方が示されています。

一方、名古屋市の第1回募集要項では、一般的な認定スケジュールとして2026年11月から12月に学識経験者への意見聴取を行うと記載されています。J-Startup選定企業の個別の省略扱いは募集要項本文だけでは判断できないため、実際の審査日程を見積もる前に名古屋市へ確認してください。

Q. 大規模な調達でも、この4号随契を利用できますか?

A. 名古屋市の募集要項では、地方公共団体の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令、いわゆるWTO案件の規定が適用される案件については、この制度による随意契約での調達はできないとされています。予定する調達の規模や契約区分は、買い手候補の部署や契約担当へ確認してください。

参考資料

名古屋市の4号随契認定では、「自治体向け」という広い提案を、具体的な行政課題、買い手部署、使用場面、提供体制、必要資金まで落とし込むことが申請準備につながります。認定後の契約を確定売上として置かず、調達時期がずれた場合にも対応できる資金計画をあわせて確認しておきましょう。

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公共調達への準備と必要資金を事業計画につなげて整理します。

確認時点・免責事項

この記事の内容は2026年9月1日時点で確認できる情報に基づいています。名古屋市は第1回募集要項と申請様式・記載例を公開していますが、個別の認定、調達、契約、融資の可否は、関係法令、各制度の最新要綱・募集要項、自治体および金融機関の判断によって決まります。申請時には名古屋市が公開する最新資料を必ず確認してください。

著者情報

佐治 英樹(さじ ひでき)
佐治 英樹(さじ ひでき)税理士(名古屋税理士会), 行政書士(愛知県行政書士会), 宅地建物取引士(愛知県知事), AFP(日本FP協会)
「税理士業はサービス業」 をモットーに、日々サービスの向上に精力的に取り組む。
趣味は、筋トレとマラソン。忙しくても週5回以上走り、週4回ジムに通うのが健康の秘訣。

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