起業成功の隠れた鍵？ コーチャビリティ(Coachability)とは？

「コーチャビリティ（Coachability）」という言葉をご存知でしょうか？もしかしたら、初めて耳にする方もいらっしゃるかもしれません。フォスターリンク株式会社の調査によると、組織に所属する10代から60代の516名のうち、「コーチャビリティという言葉を聞いたことがある」と回答したのはわずか28％にとどまり、まだ多くの人に知られていないことが明らかになりました（※1）。しかし、このコーチャビリティこそが、起業家にとって成功の鍵を握る重要な要素の一つなのです。

この記事では、コーチャビリティとは何か、なぜ起業家にとって重要なのか、そしてどのようにしてコーチャビリティを高めることができるのかを、わかりやすく解説します。この記事を読めば、コーチャビリティの重要性を理解し、ご自身のビジネスにどのように活かせるかのヒントが得られるでしょう。さあ、一緒にコーチャビリティについて学んでいきましょう！

コーチャビリティとは？起業家にとって重要な理由

コーチャビリティとは、簡単に言うと「コーチされる能力」のことです。もう少し具体的に言うと、メンターやコーチからのフィードバック（助言や指摘）を積極的に求め、真摯に受け止め、自分のビジネスの改善に活かせる能力を指します（※2）。つまり、外部からのアドバイスを受け入れ、自分自身とビジネスを成長させる力のことです。

たとえば、メンターから「そのビジネスモデルは、ターゲット顧客が不明確です」というフィードバックを受けたとします。コーチャビリティの高い起業家は、感情的に反発するのではなく、「なぜそう思われるのか？」と質問し、深く理解しようと努めます。そして、そのフィードバックを基に、ターゲット顧客を明確にするための行動を起こします。

コーチャビリティは「素直さ」とは違う？

コーチャビリティは、ただ単に相手の言うことを鵜呑みにすることではありません。言われたことをそのまま受け入れるのではなく、一度自分の中でよく考え、咀嚼（そしゃく）し、本当に自分に必要なのかどうかを見極めることが重要です。つまり、コーチャビリティとは、柔軟な心と批判的思考のバランスの上に成り立つ概念なのです。

なぜコーチャビリティが重要なのか？

起業の世界は常に新しい課題や変化に直面します。コーチャビリティを持つ起業家は、外部からの意見を積極的に取り入れることで、事業の方向性を柔軟に修正し、成長のチャンスを逃しません。また、投資家はこの能力を評価し、資金調達の判断材料としても重視しています（※3）。

コーチャビリティを構成する4つの要素

コーチャビリティは、以下の4つの要素から構成されています。

これらの要素をバランスよく持つことで、コーチャビリティの高い起業家になることができます。

コーチャビリティを高めるための具体的なステップ

コーチャビリティは、意識的に鍛えることができます。以下に、具体的なステップをご紹介します。

1. フィードバックを積極的に求める：信頼できるメンターや仲間に自分の課題を相談し、意見を求める。
2. 防御的な態度を抑える：批判的な指摘を感情的に受け止めず、まずはその意図を理解する。
3. フィードバックを振り返って咀嚼する：もらった助言を整理し、具体的な改善策を考える。
4. 小さな実践から始める：提案された改善策を試し、実際に行動に移してみる。
5. 定期的な振り返り：実行後の結果を評価し、次の改善に活かす。

これらのステップを実践することで、コーチャビリティを徐々に高めていくことができます。

まとめ

以上のようなメリットから、コーチャビリティは「ソフトスキル」の一種でありながら、ハードな成果（資金・事業成長）に結びつく重要な要素だと考えられます。

特に創業初期の不確実性が高い段階では、どんな優れたプランでも想定外の課題に直面します。その際、コーチャブルな創業者であれば周囲の知恵を借りて柔軟に対処できるため、結果として成功確率を高めることができるのです。

参考までにフィードバックを受け入れるかどうかの基準を提示します。よりよい判断の一助となれば幸いです。

名古屋創業融資支援オフィス＠本山では、起業家の皆様の資金調達や経営に関するご相談を承っております。お気軽にご相談ください。

FAQ

Q1: コーチャビリティとはどのような概念ですか？

コーチャビリティは「言われたことに何でもハイと従うこと」ではなく、自律性を保ちながら他者の知見を取り入れる能力です。たとえ、助言を検討した結果「自分の判断で従わない」という選択をしても、一度真剣に検討したのであれば、それはコーチャビリティの一部といえます。

Q2: コーチャビリティが高い起業家の特徴は何ですか？

コーチャビリティが高い起業家は、防御的にならずにフィードバックを歓迎し、自分に足りない知識や経験を謙虚に受け入れます。同時に、自分のビジョンや専門知識を踏まえ、有益な助言とそうでないものを見極める判断力も備えています。つまり、オープンマインドと批判的思考のバランスが取れているのです。

Q3: コーチャビリティが高ければ起業は必ず成功するのでしょうか？

コーチャビリティが高いと、資金や支援を得やすくなるという面では有利ですが、事業成果への直接的な影響については研究結果が分かれています。一部の研究では、コーチャビリティの高さが製品の革新性や企業パフォーマンスの向上に寄与するとされていますが、他の研究では統計的な有意差が見られないという結果も報告されています。つまり、コーチャビリティは資源獲得と学習のためには非常に有用ですが、「それさえあれば必ず成功する」という保証はありません。

参考文献

※1 フォスターリンク株式会社「個人の成長とパフォーマンス向上を促進するために重要な『コーチャビリティ』とは」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000053199.html

※2 Ciuchta, Michael et al. (2017) Betting on the coachable entrepreneur: Signaling and social exchange in entrepreneurial pitches
https://www.researchgate.net/publication/291379045_Betting_on_the_coachable_entrepreneur_Signaling_and_social_exchange_in_entrepreneurial_pitches

※3 Marvel, Matthew. (2022) Entrepreneur Coachability
https://www.researchgate.net/publication/362088729_Entrepreneur_Coachability